LITMUS記事一覧に戻る

大企業の新規事業が進まない3つの構造と、6週間で動かす方法

大企業の新規事業は、止まる。

アイデアがないわけではない。予算も、人もいる。 それでも止まる。半年、1年と塩漬けになる。

原因は、構造にある。 個人の能力や熱量ではなく、大企業に共通する「3つの構造」が新規事業を止めている。

この記事では、なぜ大企業の新規事業は進まないのかを3つの構造から解説し、6週間で事業判断(Go / No-Go / Pivot)を出す方法を書く。


大企業の新規事業が止まる3つの構造

構造1: 稟議に出せる「根拠」がない

大企業では、新規事業のアイデアを事業化するために稟議を通す必要がある。

問題は、稟議に求められる「根拠」のハードルが高いこと。

市場規模の調査レポート。競合分析のスライド。技術的なフィージビリティ。 これらは揃えられる。

だが経営層が本当に知りたいのは、もっとシンプルなことだ。

「この事業のサービスを、顧客は本当に欲しいのか。」

この問いに答えられない限り、稟議は通らない。 市場調査レポートを何枚追加しても、「欲しい」と言った顧客が一人もいない提案は通らない。

新規事業の稟議が通らない理由は「根拠」の不足

構造2: PoCを繰り返しても、前に進まない

プロトタイプは作った。社内デモもやった。 でも「顧客の声」がないから確信が持てない。

PoCを繰り返す。改良する。また社内デモをする。 半年が過ぎても、事業化の判断が出ない。

これがPoC疲れと呼ばれる現象だ。

PoCが悪いのではない。PoCの目的がずれている。

多くのPoCは「技術的に実現できるか」を検証している。 だが事業判断に必要なのは「顧客が金を払うか」の検証だ。

技術検証と事業検証は、まったく別のものだ。 ここを混同したまま何回PoCを回しても、稟議を通す材料は手に入らない。

PoCで終わらない。PoC疲れの3つの原因と処方箋

構造3: 検証に時間がかかりすぎる

「顧客の声を集めたい。」

ここまで理解したとしても、大企業では検証に時間がかかりすぎる。

調査会社にユーザーリサーチを依頼すると、最短でも3ヶ月。費用は300万〜500万円。 レポートが届く頃には、チームの熱が冷めている。 しかもレポートにはプロトタイプが含まれない。

コンサルに頼むと、戦略書は手に入る。 しかし「顧客が本当に欲しいか」はわからないまま。

自社でやろうとすると、インタビュー対象者のリクルーティングで1ヶ月。 プロトタイプの制作で2ヶ月。分析と資料化でさらに1ヶ月。 合計5-6ヶ月。他の業務と並行しながらだと、1年以上かかることもある。

検証の「正しいやり方」は知っている。 しかしそのやり方では、速度が出ない。これが3つ目の構造だ。


なぜ「構造」の問題なのか

3つの構造をまとめると、こうなる。

| 構造 | 症状 | 本質 | |---|---|---| | 根拠の不足 | 稟議が通らない | 「顧客の声」がない | | PoCの繰り返し | 検証が前に進まない | 技術検証と事業検証を混同 | | 検証の遅さ | チームの熱が冷める | 既存の手段では速度が出ない |

共通しているのは、「顧客に聞いて、作って、確かめる」というプロセスが、大企業では構造的に回りにくいということ。

個人の問題ではない。組織の構造が、新規事業のスピードと合っていない。


6週間で事業判断を出す方法

では、どうすればいいか。

結論は、検証のプロセスを6週間に圧縮すること。

「聞いて、作って、確かめる」を6週間で一気通貫に回す。 調査会社のように3ヶ月もかけない。自社でバラバラに動くのでもない。 1チームで全工程を回す。

具体的なステップはこうだ。

Week 1: 仮説整理

事業アイデアを棚卸しして、「何を」「誰に対して」「どう検証するか」を設計する。

ここを曖昧にしたまま検証を始めると、後で「結局何がわかったのか」がわからなくなる。 仮説キャンバスと検証設計書を1週間で作る。

Week 2-3: 顧客インタビュー

ターゲット顧客に直接話を聞く。

BtoBなら専門家3-5名、BtoCなら5-10名。 ビザスクやuniiリサーチなどのプラットフォームを使えば、最短1週間でリクルーティングできる。

インタビューで聞くべきは「このサービスどう思いますか」ではない。 「今、その課題にどう対処していますか」だ。

顧客の現在の行動を聞くことで、課題の深さと支払い意欲が見える。

仮説検証インタビューで聞くべき5つの質問

Week 3-4: プロトタイプ制作

インタビューで掴んだ課題をもとに、プロトタイプを作る。

ここで重要なのは「完成度」ではなく「速度」。 生成AIを活用すれば、通常2-4週間かかるプロトタイプを3-5日で形にできる。

パワーポイントの画面遷移図ではない。 顧客が実際に触れるもの。クリックできるもの。反応を測れるもの。

AIプロトタイピングで検証を加速する

Week 4-5: ユーザー検証

プロトタイプを顧客に見せて、反応を確認する。

「欲しい」と言った人が何人いたか。 「いくらなら払うか」にどう答えたか。 改善すべき点はどこか。

定性(インタビュー)と定量(反応データ)の両面で集める。

Week 6: 事業判断レポート

全データを統合し、Go / No-Go / Pivot の判断根拠を1つのレポートにまとめる。

稟議に使えるフォーマットで作る。 経営層が知りたいのは「顧客が欲しいと言ったか」「データはあるか」「次に何をすべきか」の3点。 この3点に明確に答えるレポートがあれば、稟議は通る。


6週間で変わること

調査会社に依頼する場合と比較すると、こうなる。

| | 調査会社 | 6週間スプリント | |---|---|---| | 期間 | 3ヶ月以上 | 6週間 | | 費用 | 300-500万円 | 150万円〜 | | プロトタイプ | 含まれない | 含む | | 顧客の声 | アンケート中心 | 直接インタビュー | | 稟議資料 | 別途作成が必要 | セットで納品 | | 成果物 | 調査レポート | 事業判断レポート+稟議サポート資料 |

違いは「速さ」だけではない。

調査会社のレポートは「市場にこういう傾向がある」で終わる。 6週間スプリントの成果物は「この顧客がこう言った。プロトタイプにこう反応した。だからGoすべき」まで踏み込む。

稟議を通すために必要なのは、後者だ。


「No-Go」にも価値がある

6週間で検証した結果、「この事業はやめるべき」という結論が出ることもある。

これは失敗ではない。

根拠なく事業を進めて、半年後に数千万円を失うよりも、6週間と150万円で「やめる判断」ができる方が合理的だ。

大企業の新規事業で最も高くつくのは、「やるともやめるとも決められないまま時間が過ぎる」ことだ。

Go / No-Go / Pivot。 どの判断であっても、根拠を持って判断できる状態を作ること。 それが6週間スプリントの目的だ。


まとめ: 大企業の新規事業を動かすために

大企業の新規事業が止まる原因は、3つの構造にある。

  1. 稟議に出せる根拠がない — 顧客の声を集めていない
  2. PoCを繰り返しても進まない — 技術検証と事業検証を混同している
  3. 検証に時間がかかりすぎる — 既存の手段では速度が出ない

解決策は、「聞いて、作って、確かめる」を6週間に圧縮すること。

仮説整理 → 顧客インタビュー → AIプロトタイピング → ユーザー検証 → 事業判断レポート。

この一連の流れを1チームで一気通貫に回せば、大企業の新規事業は動き出す。


FAQ

大企業の新規事業はなぜ失敗するのか

失敗の主因は「検証不足のまま事業化を進める」こと。市場調査や競合分析はしていても、「顧客が本当に欲しいか」を確認していないケースが多い。顧客インタビューとプロトタイプによる検証を事業化の前に行うことで、失敗確率を大きく下げられる。

大企業の新規事業はどう進めればいいか

最も効果的なのは、仮説検証スプリント。仮説整理 → 顧客インタビュー → プロトタイプ制作 → ユーザー検証 → 事業判断の5ステップを6-8週間で回す。小さく検証して、データをもとに判断する。

6週間で本当に判断できるのか

すべてを解明するのではなく、「次のフェーズに進めるべきか」の判断に必要十分なデータを集める。BtoBなら3-5名、BtoCなら5-10名のインタビューとプロトタイプ検証で、事業判断に必要な材料は揃う。

新規事業の検証にいくらかかるか

自力で行うと5-6ヶ月(実質コストは人件費)。調査会社に依頼すると3ヶ月・300-500万円。仮説検証スプリントなら6週間・150万円〜。プロトタイプ制作や稟議資料まで含む。→ 検証費用の比較

社名を出さずに検証できるか

可能。匿名ブランドでの検証が可能で、社名を出さない別ブランド・別ドメインで実施し、終了後にすべて削除する設計もできる。大企業のブランドを守りながら検証を進められる。


LITMUSは、新規事業の仮説検証に特化したスタジオです。「聞いて、作って、確かめる」を6週間で。事業アイデアの段階からご相談いただけます。

LITMUS — 仮説検証スタジオ