AIプロトタイピングで検証を加速する — 3日でプロトタイプを作る方法
新規事業の検証で、プロトタイプを作るのに3ヶ月かける必要はない。
生成AIの登場で、プロトタイプの制作コストは劇的に下がった。コンセプトが固まっていれば、動くプロトタイプを数日で作れる。
ただし、条件がある。「何のためにプロトタイプを作るか」が明確であること。検証目的のプロトタイプと、製品開発のプロトタイプは、まったく別のものだ。
検証用プロトタイプと製品プロトタイプの違い
この違いを理解していないと、3ヶ月かけて完璧なものを作り、結局顧客に見せないまま終わる。
製品プロトタイプ:
- 目的: 製品の設計・仕様を固める
- 品質: 高い完成度が必要
- 期間: 数ヶ月
- 対象: 開発チーム、ステークホルダー
検証用プロトタイプ:
- 目的: 顧客の反応を取る
- 品質: 顧客が「触れて反応できる」最低限でいい
- 期間: 数日
- 対象: 潜在顧客
検証用プロトタイプに必要なのは、「顧客が触って、具体的な反応を返せる」粒度だ。動くボタンが3つあれば十分なこともある。
なぜ「触れるもの」が必要なのか
パワーポイントの企画書を顧客に見せても、得られるのは「面白そうですね」という感想だ。
触れるプロトタイプを見せると、反応が変わる。
「ここは直感的にわかる」「この画面、何をすればいいかわからない」「この機能は毎日使う。こっちは要らない」「月3万円なら払う。5万円は高い」
具体的な反応が出る。これが検証データだ。
パワーポイントと触れるプロトタイプの差は、「感想」と「データ」の差。稟議書に書けるのは後者だけだ。
生成AIでプロトタイプを作る3つの方法
方法1: コード生成AIでWebアプリを作る
最も自由度が高い方法。CursorやClaude Codeなどのコード生成AIを使い、Next.jsやReactでWebアプリケーションを作る。
向いているケース:
- SaaS型のサービス
- Webアプリケーション
- ダッシュボードやツール系
所要時間: 2-3日(コンセプトが固まっている場合)
メリット: 実際に動く。入力・出力がある。顧客が「使う体験」をできる。
デメリット: 最低限のプログラミング知識が必要。ただし、生成AIの指示だけで作れる範囲は年々広がっている。
方法2: Figmaでインタラクティブモックを作る
コーディング不要の方法。Figmaでデザインを作り、プロトタイプ機能で画面遷移を設定する。
向いているケース:
- モバイルアプリ
- UI/UXの検証が主目的
- デザインの方向性を確認したい
所要時間: 1-2日
メリット: コーディング不要。デザインの自由度が高い。
デメリット: 「動いている感」に限界がある。データの入出力はシミュレーションになる。
方法3: ノーコードツールで作る
Bubble、Glide、STUDIOなどのノーコードツールを使う方法。
向いているケース:
- フォームやマッチングの仕組み
- シンプルな業務ツール
- データベースを使うサービス
所要時間: 2-5日
メリット: プログラミング不要で実際に動くものが作れる。
デメリット: カスタマイズに限界がある。複雑なロジックは難しい。
3日で作るための5つの原則
原則1: 検証する仮説を1つに絞る
「このサービス全体を見せたい」と思うと、作るものが膨大になる。
検証する仮説を1つに絞る。「顧客はこの課題を解決するために月額3万円を払うか」。この1つの仮説に対して、顧客が反応できる最小限のプロトタイプを作る。
原則2: コア機能だけ作る
ログイン画面、設定画面、プロフィール画面。これらは検証に不要だ。
顧客が「価値を感じるかどうか」を判断できるコア機能だけ作る。3画面で十分なことも多い。
原則3: ダミーデータで埋める
「データがないから動かない」は言い訳だ。
検証用プロトタイプは、ダミーデータで動けばいい。顧客に「実際にはここにあなたのデータが入ります」と説明すれば、十分に反応を取れる。
原則4: 見た目は最低限でいい
デザインの美しさは、この段階では優先度が低い。
Tailwind CSSのデフォルトスタイルで十分。色は2色。フォントは1つ。余白を適切に取れば、「触れるもの」としては成立する。
原則5: 完璧を捨てる
バグがあっていい。エラーハンドリングが不完全でいい。動かないページがあってもいい。
検証の場で顧客と一緒に操作すれば、バグは回避できる。大事なのは「この方向性に価値を感じるか」への反応を取ることだ。
プロトタイプを使った検証の進め方
1. インタビューの後半で見せる
いきなりプロトタイプを見せない。
まず課題のインタビューをする(30分)。顧客が自分の課題を語った後に、「実は、こういうものを作っています」とプロトタイプを見せる(15分)。
課題を語った直後なので、プロトタイプへの反応がリアルになる。
2. 操作してもらう
説明しない。操作してもらう。
「これ、触ってみてください。何をするものか、見てわかりますか?」
操作中の表情、迷い、質問。すべてがデータだ。説明が必要な箇所は、UIが不明確だということ。
3. 具体的な質問をする
「どう思いますか?」ではなく。
「これ、月額いくらなら使いますか?」 「今使っている〇〇と比べて、どちらを選びますか?」 「明日からこれが使えるとしたら、最初に何をしますか?」
行動レベルの回答を引き出す。
AIプロトタイピングの費用感
| 方法 | 費用 | 期間 | |------|------|------| | コード生成AI(自社) | ほぼゼロ(AI利用料のみ) | 2-3日 | | Figmaモック(自社) | ほぼゼロ | 1-2日 | | ノーコード(自社) | ツール利用料のみ | 2-5日 | | 外部委託(制作会社) | 100-300万円 | 1-2ヶ月 | | 仮説検証スタジオ | 50万円〜 | 2-3週間 |
自社でできるなら、コストはほぼゼロ。だが、「仮説の整理」「検証の設計」「インタビューとの連動」を含めて考えると、専門チームに任せる選択肢も合理的だ。
まとめ
検証用プロトタイプは、製品ではない。顧客の反応を引き出すための道具だ。
- 完成度より速度。3ヶ月ではなく3日
- コア機能だけ作る。ログイン画面は不要
- 生成AIの活用で、制作コストは劇的に下がった
- 「触れるもの」があるだけで、顧客の反応は「感想」から「データ」に変わる
パワーポイントを磨く時間があるなら、プロトタイプを作る時間に使う。事業判断は、そちらの方が早く出る。
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