新規事業の検証にいくらかかるか — 4つの選択肢を比較する
新規事業の仮説検証を進めたい。だが、予算をどう確保するか。
「自分でやればタダ」は本当か。「調査会社に頼むと高い」は正しいか。「コンサルは必要か」。
この記事では、仮説検証にかかる費用を4つのパターンで比較する。期間、費用、得られるもの。判断材料として使ってほしい。
比較の前提
比較対象は「新規事業の初期仮説検証」。具体的には以下を含む範囲。
- 仮説の構造化・整理
- ターゲット顧客へのインタビュー(5-8名)
- プロトタイプの制作
- プロトタイプに対するユーザーテスト
- 検証結果の整理・レポート
- 稟議に使える資料の作成
この一連のプロセスを、誰が、いくらで、どれくらいの期間でやるか。
選択肢1: 自力でやる
費用: ほぼゼロ(ツール利用料程度) 期間: 3-6ヶ月(本業と並行の場合) 得られるもの: インタビューデータ、簡易プロトタイプ
メリット
- コストが最も低い
- 自社で知見が蓄積される
- 自分たちのペースで進められる
デメリット
- 本業と並行するため、期間が長引く
- インタビューのリクルーティングに時間がかかる(BtoB専門家の場合、2-3週間)
- インタビュー設計のノウハウがないと、使えるデータが取れない
- プロトタイプ制作の技術リソースがない場合、パワーポイント止まりになる
向いているケース
- 検証に使える時間が十分にある
- インタビューやプロトタイプ制作の経験がある
- 予算がまったくない初期段階
注意点
「タダ」に見えるが、担当者の人件費を考えると実際のコストはゼロではない。月給50万円の担当者が6ヶ月の20%を使えば、実質60万円。しかも、その間は他の業務に影響が出る。
選択肢2: 調査会社に依頼する
費用: 300-500万円 期間: 2-3ヶ月 得られるもの: 調査レポート(定量・定性)
メリット
- 調査設計のプロが担当する
- 大規模なサンプルが確保できる
- レポートの質が高い
デメリット
- プロトタイプの制作は含まれない
- ユーザーテストは範囲外のことが多い
- 稟議書の作成サポートはない
- 「レポートはもらったが、次に何をすればいいかわからない」になりがち
向いているケース
- 定量データが必要(市場規模の推定、ニーズの定量把握)
- 社内の稟議で「調査会社の名前」が信頼につながる
- 予算が300万円以上ある
注意点
調査会社のアウトプットは「調査レポート」だ。事業判断に必要な「プロトタイプへの顧客反応」「Go/No-Goの判断材料」は含まれない。調査と検証は別のプロセスだ。
選択肢3: コンサルに依頼する
費用: 500-1,500万円 期間: 3-6ヶ月 得られるもの: 戦略レポート、市場分析、事業計画
メリット
- 戦略的な視点で事業全体を設計できる
- 経営層への説得力が高い(コンサル名の権威)
- 業界知見が深い
デメリット
- 費用が最も高い
- 「戦略」止まりで「実行」まで含まれないことが多い
- 顧客インタビューやプロトタイプは範囲外、または別途費用
- 期間が長い
向いているケース
- 事業戦略レベルの検討が必要
- 経営層の意思決定に「大手コンサル」の名前が必要
- 予算が500万円以上ある
注意点
コンサルの成果物は「戦略」と「分析」だ。47ページのPDFが納品される。だが、そのPDFを受け取った後、「では実際に検証を進める」段階で手が止まることが多い。戦略と実行の間にギャップがある。
選択肢4: 仮説検証スタジオに依頼する
費用: 50-250万円 期間: 2-8週間 得られるもの: インタビューデータ、プロトタイプ、ユーザーテスト結果、事業判断レポート
メリット
- インタビューからプロトタイプ、検証、レポートまで一気通貫
- 最も短期間で事業判断の材料が揃う
- 稟議に使える資料が成果物に含まれる
デメリット
- 戦略コンサルティングは範囲外
- 大規模定量調査は範囲外
- 市場に事業者が少ない(新しいカテゴリ)
向いているケース
- 「検証データが足りなくて稟議が通らない」状態
- 速度が重要(四半期内に判断を出したい)
- まず小さく試して、手応えを見たい
4つの選択肢を比較する
| | 自力 | 調査会社 | コンサル | 検証スタジオ | |---|---|---|---|---| | 費用 | 実質0-60万円 | 300-500万円 | 500-1,500万円 | 50-250万円 | | 期間 | 3-6ヶ月 | 2-3ヶ月 | 3-6ヶ月 | 2-8週間 | | 仮説整理 | 自分で | 一部 | 含む | 含む | | インタビュー | 自分で | 含む | 一部 | 含む | | プロトタイプ | 自分で | 含まない | 含まない | 含む | | ユーザーテスト | 自分で | 含まない | 含まない | 含む | | 稟議資料 | 自分で | 含まない | 一部 | 含む | | 向いている人 | 時間がある | データが欲しい | 戦略が必要 | 判断材料が欲しい |
どれを選ぶか — 判断基準
「時間はあるが予算がない」→ 自力
ただし、インタビュー設計とプロトタイプ制作のスキルがあることが前提。なければ、学習コストも含めて6ヶ月以上かかる。
「大規模な定量データが必要」→ 調査会社
1,000名規模のアンケートや、統計的に有意なデータが必要な場合。ただし、新規事業の初期段階では、定量データより定性データ(インタビュー)の方が有用なことが多い。
「事業戦略全体の設計が必要」→ コンサル
検証以前に、事業ドメインの選定や市場分析が必要な段階。ただし、戦略の後に検証は別途必要。
「四半期内に検証結果を出したい」→ 検証スタジオ
最もスピードが速い。検証に必要な一連のプロセスが一気通貫で回る。まず50万円のEntry Moduleから始め、手応えがあれば統合検証に進む、という段階的なアプローチも可能。
組み合わせという選択肢
4つは排他的ではない。
「自力で仮説整理 + 検証スタジオでインタビューとプロトタイプ」 「調査会社で定量データ + 検証スタジオで定性検証とプロトタイプ」 「コンサルで戦略 + 検証スタジオで実行」
特に、コンサルの戦略レポートを受け取った後、「実行フェーズを誰がやるか」で止まるケースは多い。検証スタジオはその実行部分を担う。
まとめ
新規事業の検証にかかる費用は、方法によって0円から1,500万円まで幅がある。
大事なのは「安い方法」を選ぶことではなく、「今の自分たちに必要なもの」を見極めること。
- データが足りないなら → インタビュー
- 触れるものがないなら → プロトタイプ
- 全部足りないなら → 一気通貫で回せる方法
検証にかけた費用は、間違った方向に数千万円を投資するリスクを防ぐ保険でもある。
LITMUSは、新規事業の仮説検証に特化したスタジオです。50万円から始められるEntry Moduleから、150万円〜の統合Validation Sprintまで、状況に合わせたアプローチを提供しています。詳しくは LITMUS をご覧ください。