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仮説検証インタビューで聞くべき5つの質問

新規事業のインタビューで「このサービスどう思いますか?」と聞いてはいけない。

相手は「いいですね」と答える。社交辞令だ。これでは検証データにならない。

仮説検証インタビューの目的は、顧客の「今の行動」と「今の不満」を聞き出すことだ。未来の話ではなく、過去と現在の話。感想ではなく、事実。

この記事では、顧客の深層課題を引き出す5つの質問パターンを紹介する。


なぜ「どう思いますか?」がダメなのか

人は聞かれると答える。丁寧に。好意的に。

「このアイデアについてどう思いますか?」と聞けば、「面白いですね」「ニーズはあると思います」と返ってくる。これは顧客の本音ではない。その場の空気を壊さないための回答だ。

仮説検証インタビューで必要なのは、顧客の「行動」に関するデータだ。何を思うかではなく、何をしているか。何に困っていて、今それにどう対処しているか。

行動は嘘をつかない。


質問1:「この課題に、今どう対処していますか?」

最も重要な質問がこれだ。

課題の存在を「はい/いいえ」で聞いてはいけない。「困っていますか?」と聞けば、たいてい「はい」と答える。それでは根拠にならない。

代わりに、今の対処法を聞く。

「今、この業務をどうやっていますか?」 「Excelで管理しているんですか? 具体的にどういうシートですか?」 「それにどれくらい時間がかかっていますか?」

対処法が存在するということは、課題が実在するということだ。そして、その対処法の「面倒さ」「コスト」「限界」が、新しい解決策の価値を測る基準になる。


質問2:「最後にこの問題で困ったのはいつですか?」

抽象的な質問は抽象的な回答を生む。具体的なエピソードを引き出す質問をする。

「最後にこれで困ったのはいつですか?」 「直近で、この作業に一番時間がかかったのはどんなケースですか?」 「最近、これが原因でトラブルになったことはありますか?」

具体的なエピソードが出てくれば、課題は実在している。出てこなければ、その課題は顧客にとって優先度が低い可能性がある。

この質問のポイントは「最後に」「直近で」「最近」という時間軸を入れること。記憶に新しいエピソードほど、詳細に語れる。詳細が出るほど、検証データとしての価値が高い。


質問3:「それを解決するために何か試しましたか?」

顧客が課題を認識していても、何も行動していなければ、それは「困ってはいるが、お金を払うほどではない」課題かもしれない。

「解決しようと思って、何か試したことはありますか?」 「ツールを探したことはありますか?」 「外部に相談したことはありますか?」

この質問で顧客の「本気度」がわかる。

すでに何かを試して失敗しているなら、次の解決策に対する需要は高い。何も試していないなら、課題の優先度を疑う必要がある。

また、試した解決策の「不満点」は、自社サービスの差別化ポイントになる。「A社のツールを使ったけど、BtoB向けの機能がなかった」。これは貴重な情報だ。


質問4:「これが解決したら、何が変わりますか?」

課題の深刻度を測る質問だ。

「もしこの問題がなくなったら、仕事はどう変わりますか?」 「この作業がゼロになったら、その時間で何をしますか?」

回答が具体的であるほど、課題の深刻度は高い。

「月40時間は浮く。その分、新規の企画に時間を使える」。これは深刻な課題だ。「まあ、少し楽になるかな」。これは優先度が低い。

この質問のもう一つの価値は、顧客の言葉で「ベネフィット」が手に入ること。稟議書にも、LPにも、そのまま使える。


質問5:「いくらなら払えますか?」— ではなく、「今いくらかけていますか?」

価格の質問は直接聞いてはいけない。「いくらなら買いますか?」と聞かれても、顧客は正確に答えられない。存在しないものの価値は想像できないからだ。

代わりに、今のコストを聞く。

「今、この課題にどれくらいの費用をかけていますか?」 「この作業に関わっている人は何人ですか?」 「外部に委託している場合、年間いくらくらいですか?」

今かかっているコストが、新しい解決策の価格の上限になる。顧客が年間500万円をかけている課題なら、年間200万円のサービスは安い。顧客がゼロ円で済ませている課題なら、有料化のハードルは高い。


インタビューの設計原則

5つの質問に共通する原則がある。

過去と現在を聞く。未来を聞かない。 「使いたいですか?」は未来の質問。信頼できない。「今どうしていますか?」は現在の質問。信頼できる。

行動を聞く。感想を聞かない。 「良いと思いますか?」は感想。「先月これに何時間使いましたか?」は行動。

具体を聞く。抽象を聞かない。 「課題はありますか?」は抽象。「最後に困ったのはいつですか?」は具体。

この3つの原則を守るだけで、インタビューの質は劇的に変わる。


何名にインタビューすればいいか

BtoB専門家なら3-5名。BtoCなら5-10名。

「統計的に有意な数字が必要では」と社内で言われることがある。結論から言えば、不要だ。

仮説検証インタビューの目的は、統計ではなく「パターンの発見」。5名中4名が同じ課題を語ったなら、そのパターンは信頼できる。5名全員がバラバラなら、仮説を見直す必要がある。

大事なのは人数ではなく、質問の設計と、インタビュー対象者の選定だ。


まとめ

仮説検証インタビューで聞くべき5つの質問。

  1. 「今どう対処していますか?」 — 課題の実在性を確認する
  2. 「最後に困ったのはいつですか?」 — 具体的なエピソードを引き出す
  3. 「解決するために何か試しましたか?」 — 顧客の本気度を測る
  4. 「解決したら何が変わりますか?」 — 課題の深刻度を測る
  5. 「今いくらかけていますか?」 — 価格の基準を知る

「どう思いますか?」ではなく「今どうしていますか?」。この違いが、稟議を通す根拠と、通らない感想の差になる。


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