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PoCで終わらない。PoC疲れの3つの原因と、抜け出すための処方箋

PoC疲れという言葉がある。

新規事業部門で、PoCを繰り返しているのに、一向に事業化の判断が出ない状態。3回目のPoC報告会で「もう少しデータが欲しい」と言われたとき、多くの担当者が感じるあの疲労感のことだ。

「PoC疲れ」の概念を整理した記事はいくつかある。だが、ではどうすればいいのか。具体的な処方箋を書いている記事は、ほとんどない。

この記事では、PoC疲れの構造的原因を3つ指摘し、それぞれに対する処方箋を提示する。


PoC疲れの正体は「検証の仕方」の問題

まず前提を共有する。

PoC疲れは、アイデアが悪いから起きるのではない。検証の仕方が間違っているから起きる。

正確に言えば、「PoCという手法そのもの」が、新規事業の初期検証に向いていないケースが多い。PoCは技術的な実現可能性を確かめる手法だ。だが、多くの新規事業で本当に検証すべきは「顧客がこの課題を本当に抱えているか」「お金を払ってでも解決したいか」という事業仮説の方だ。

技術の検証を繰り返しても、事業判断の材料は揃わない。ここにPoC疲れの根本原因がある。


原因1: 検証すべき仮説が定まっていない

最も多いパターンがこれだ。

「市場にニーズがあるか」「技術的に実現できるか」「収益モデルが成立するか」。複数の仮説が未整理のまま、とりあえずPoCを始める。

結果、PoCの報告書を読んだ上長が「で、顧客は本当に欲しいの?」と聞く。答えられない。技術検証しかしていないからだ。

処方箋: PoCの前に仮説を構造化する。

検証すべき仮説を「顧客課題」「解決策」「収益モデル」「実現可能性」の4つに分け、今回のPoCで何を検証するのかを明文化する。1回のPoCで全部を検証しようとしない。

稟議書に書くべきは「何を検証したか」ではなく「何が検証済みで、何が未検証か」。この整理がないまま走り出すと、PoC沼にはまる。


原因2: 顧客の声がない

PoCの報告書に、顧客の声が入っていない。

社内のワークショップで出た仮説、デスクリサーチで集めた市場データ、技術チームが作ったプロトタイプの動作確認。これらは揃っている。だが、実際の顧客が「この課題を今どう対処しているか」「この解決策にいくら払うか」を語った言葉がない。

経営層が「もう少しデータが欲しい」と言うとき、本当に欲しいのは市場規模の数字ではない。「顧客が本当に困っている」という生の証拠だ。

処方箋: N1インタビューから始める。

BtoB専門家なら3-5名。BtoCなら5-10名。統計的な有意性は不要だ。

大事なのは人数ではなく、質問の設計。「このサービスどう思いますか?」では何も出てこない。「この課題に、今どう対処していますか?」で深層が見える。

1人の深い声から、事業の方向性が見えることがある。N1分析という手法だ。5名分のインタビューデータがあれば、課題のパターンは整理できる。


原因3: 触れるものがない

パワーポイントのコンセプト資料を見せても、顧客は正直な反応を返さない。

「いいですね」「面白そうですね」。これは社交辞令であって検証データではない。顧客が本音を語るのは、実際に触れるプロトタイプを前にしたときだ。

触れるものがあると、反応が変わる。「ここは使いにくい」「この機能は要らない」「これがあれば月3万円は払う」。具体的な反応が出る。これが事業判断の材料になる。

処方箋: 検証用プロトタイプを、早く・安く作る。

完成品は要らない。検証したい仮説に対して、顧客が触って反応できる最低限のものがあればいい。

生成AIの登場で、プロトタイプの制作コストは劇的に下がった。コンセプトが固まっていれば、動くプロトタイプを数日で作れる時代だ。3ヶ月かけて完璧なものを作る必要はない。3日で「触れるもの」を作り、顧客の前に出す。反応を見て、直す。このサイクルを回す方が、事業判断は早く出る。


PoC疲れから抜け出す3つの処方箋(まとめ)

  1. 仮説を構造化する。 PoCの前に「何を検証するか」を明文化する
  2. 顧客の声を集める。 3-5名のN1インタビューで課題のパターンを掴む
  3. 触れるものを作る。 検証用プロトタイプで、顧客の本音を引き出す

この3つを、PoCの「前」にやる。順番が大事だ。

仮説整理 → インタビュー → プロトタイプ → ユーザーテスト → 事業判断。

この流れを6-8週間で回せば、「もう少しデータが欲しい」と言われることはなくなる。稟議書に書ける材料が揃うからだ。


最後に

PoC疲れの本質は、「検証」と「実験」の混同にある。

PoCは技術実験だ。事業判断に必要なのは、顧客の声に基づいた仮説検証だ。

やるべきことは、PoCを繰り返すことではない。検証の仕方を変えることだ。


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