PoCと仮説検証の違い — 新規事業で本当に必要な検証とは
PoCと仮説検証。
どちらも「検証」という言葉を使う。 どちらも新規事業の文脈で語られる。
だが、この2つはまったく別のものだ。
PoCは「技術的に実現できるか」を確認する。 仮説検証は「顧客が本当に欲しいか」を確認する。
この違いを曖昧にしたまま検証を進めると、PoCを何回繰り返しても事業判断が出ない状態に陥る。いわゆるPoC沼だ。
3つの軸で比較する
1. 目的の違い
| | PoC(概念実証) | 仮説検証 | |---|---|---| | 問い | 「技術的に実現できるか」 | 「顧客がそれを欲しいか」 | | 検証対象 | 技術・システム・連携 | 課題・ニーズ・支払い意欲 | | 判断基準 | 動くか動かないか | Go / No-Go / Pivot |
PoCの答えは「実現可能」か「不可能」。 仮説検証の答えは「やるべき」か「やめるべき」か「方向を変えるべき」。
経営層が稟議で求めているのは、後者だ。
2. 手法の違い
| | PoC | 仮説検証 | |---|---|---| | 中心的な活動 | プロトタイプ制作・技術テスト | 顧客インタビュー・ユーザーテスト | | 対象者 | 開発チーム・社内関係者 | ターゲット顧客 | | データ | 技術的なログ・パフォーマンス | 顧客の声・反応データ | | 期間 | 2-6ヶ月 | 6-8週間 |
PoCは社内で完結する。 仮説検証は社外(顧客)と接点を持つ。
この差が、成果物の質に直結する。
3. 成果物の違い
| | PoC | 仮説検証 | |---|---|---| | 成果物 | 動くプロトタイプ | 事業判断レポート | | 稟議での効力 | 「作れます」 | 「顧客が欲しいと言いました」 | | 次のアクション | 開発を続けるかどうか | 事業化するかどうか |
PoCの成果物は「技術的な証明」。 仮説検証の成果物は「事業判断の根拠」。
稟議を通すために必要なのは、後者だ。
なぜ混同されるのか
PoCと仮説検証が混同される理由は2つある。
理由1: どちらも「プロトタイプ」を作る
PoCでもプロトタイプを作る。仮説検証でもプロトタイプを作る。 ただし、目的が違う。
PoCのプロトタイプ: 技術が動くことを証明するため。 仮説検証のプロトタイプ: 顧客に見せて反応を確認するため。
前者は社内向け、後者は顧客向け。ここを混同すると、社内デモを何回やっても事業判断が出ない。
理由2: 大企業では「PoC」が通称になっている
大企業では、新規事業の検証活動をすべて「PoC」と呼ぶ文化がある。 技術検証も、顧客検証も、市場調査も、全部「PoC」。
言葉が一緒なので、中身の違いが見えにくい。 「PoCをやりました」と言っても、技術を検証しただけで顧客には一度も聞いていない。
どちらをいつやるべきか
PoCと仮説検証は、順番がある。
仮説検証(顧客が欲しいか) → PoC(技術的に作れるか) → 製品開発
先に仮説検証。後にPoC。
「顧客が欲しくないもの」を技術的に作れても意味がない。 まず「欲しい」を確認してから、「作れるか」を検証する。
逆の順番でやると、技術的には完璧なものを作ったのに誰も使わない、という結果になる。
仮説検証スプリントの進め方
仮説検証を6週間で行う場合のステップ。
- 仮説整理(Week 1) — 何を検証するか、何がわかればOKか
- 顧客インタビュー(Week 2-3) — ターゲット3-5名に課題の深さを聞く
- プロトタイプ制作(Week 3-4) — AIで3-5日、顧客に見せるレベル
- ユーザー検証(Week 4-5) — プロトタイプへの顧客の反応を確認
- 事業判断(Week 6) — Go / No-Go / Pivot の判断根拠をまとめる
PoCと違い、すべてのステップに顧客との接点がある。 これが、事業判断の根拠を生む。
→ 大企業の新規事業が進まない3つの構造と、6週間で動かす方法
FAQ
PoCとMVPの違いは何か
PoCは「技術的に実現できるか」の検証。MVPは「最小限の機能で顧客に価値を提供できるか」の検証。PoCは技術フォーカス、MVPは事業フォーカス。仮説検証はMVPに近いが、MVPよりも前の段階(事業判断を出すまで)をカバーする。
PoCは不要か
不要ではない。技術的に高度な要素がある場合(AI、ブロックチェーン、IoTなど)はPoCが必要。ただし、PoCの前に仮説検証で「顧客が欲しいか」を確認すべき。技術検証→事業検証ではなく、事業検証→技術検証の順番が正しい。
PoC沼から抜け出すにはどうすればいいか
PoCのフレームを「技術検証」から「事業検証」に変える。具体的には、(1) 顧客インタビューをプロセスに組み込む、(2) 終了条件(Go / No-Go)を事前に設定する、(3) 期間を6週間に区切る。
LITMUSは、新規事業の仮説検証に特化したスタジオです。PoCの繰り返しではなく、6週間で事業判断を出す。