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デザインスプリントと仮説検証スプリントの違い

デザインスプリントを新規事業に使う企業が増えている。

Googleが開発した5日間の検証手法。 月曜に課題を定義し、金曜にユーザーテストする。

優れた手法だ。だが、万能ではない。

デザインスプリントで得られるのは「解決策のヒント」。 新規事業の稟議に必要なのは「事業判断の根拠」。

この2つは別のものだ。


3つの軸で比較する

1. 目的の違い

| | デザインスプリント | 仮説検証スプリント | |---|---|---| | 問い | 「この解決策は正しいか」 | 「この事業をやるべきか」 | | 検証対象 | UI/UX・プロダクトの方向性 | 課題・ニーズ・支払い意欲 | | 判断基準 | ユーザビリティの改善点 | Go / No-Go / Pivot |

デザインスプリントは「どう作るか」の検証。 仮説検証スプリントは「作るべきか」の検証。

新規事業の初期段階で必要なのは後者だ。

2. プロセスの違い

| | デザインスプリント | 仮説検証スプリント | |---|---|---| | 期間 | 5日間 | 6-8週間 | | 参加者 | 社内メンバー5-7名 | 社内チーム + ターゲット顧客3-5名 | | 顧客接点 | 金曜のテストのみ(5名程度) | Week 2-5で継続的に接触 | | プロトタイプ | ペーパーモック or 画面遷移 | 触れるプロトタイプ(AIで3-5日で制作) | | 成果物 | テスト結果・改善リスト | 事業判断レポート・稟議サポート資料 |

最大の違いは顧客との接点の量だ。

デザインスプリントでは、顧客と接するのは金曜日の5名のみ。 仮説検証スプリントでは、Week 2から継続的に顧客と接する。

インタビューで課題を深く掘り、プロトタイプで反応を確認し、支払い意欲まで確認する。

3. 成果物の違い

| | デザインスプリント | 仮説検証スプリント | |---|---|---| | 成果物 | ユーザビリティテスト結果 | 事業判断レポート | | 稟議での効力 | 「この方向で作れそう」 | 「顧客が欲しいと言った。Go推奨」 | | 次のアクション | プロダクト設計に進む | 事業化の意思決定 |

デザインスプリントの成果物は「プロダクトの改善点」。 仮説検証スプリントの成果物は「事業判断の材料」。

稟議を通すには後者が必要だ。

新規事業の稟議が通らない理由は「根拠」の不足


デザインスプリントが向いているケース

デザインスプリントは不要なわけではない。向いているケースがある。

1. 事業の方向性が決まった後

「この事業をやる」と決まった後に、「どう作るか」を検証する段階。 UIの方向性、情報設計、ユーザーフロー。 この段階ではデザインスプリントが威力を発揮する。

2. 既存事業のリニューアル

既存の顧客がいて、課題もわかっている。 「新しいUIで体験がどう変わるか」を短期間で検証したい。 これはデザインスプリントの本来の用途だ。

3. チームのアライメント

5日間で全員が同じ方向を向く。 部門横断チームの意思統一ツールとしても優秀。


仮説検証スプリントが向いているケース

1. 新規事業の初期段階

「このアイデアは事業になるか」を判断する段階。 顧客の課題が本物か、支払い意欲があるかを確認する必要がある。

2. PoC後の事業判断

PoCで「技術的に作れる」ことはわかった。 だが「顧客が欲しいか」がわからない。

PoCと仮説検証の違い — 新規事業で本当に必要な検証とは

3. 稟議の材料が不足している

「データがない」「根拠が弱い」で稟議が止まっている。 6週間で顧客の声とプロトタイプ反応を集め、判断材料を揃える。


どちらをいつ使うか

アイデア → 仮説検証スプリント(6週間)→ Go判断 → デザインスプリント(5日)→ 製品開発

先に仮説検証。後にデザインスプリント。

仮説検証スプリントで「やるべき」と判断した後に、デザインスプリントで「どう作るか」を検証する。

この順番を逆にすると、「UIは素晴らしいが、誰も欲しがらない」プロダクトができる。


組み合わせるという選択肢

2つを組み合わせる方法もある。

パターン: 仮説検証スプリントの中にデザインスプリント的要素を組み込む

仮説検証スプリントのWeek 3-4で、デザインスプリントの手法(プロトタイプ制作→即テスト)を使う。 6週間の仮説検証の中に5日間のデザインスプリントを埋め込む形だ。

これにより、事業判断とプロダクトの方向性を同時に検証できる。


FAQ

デザインスプリントで新規事業の検証はできないか

UI/UXの検証はできる。だが事業判断(Go / No-Go / Pivot)に必要な「課題の深さ」「支払い意欲」「顧客インサイト」は5日間では取りきれない。新規事業の初期段階では仮説検証スプリントが適している。

デザインスプリントの費用はいくらか

外部ファシリテーターに依頼する場合、100-300万円が相場。社内でやる場合は人件費のみだが、ファシリテーションスキルが必要。仮説検証スプリント(150万円〜/6週間)と比較すると、期間あたりのコストは近いが、得られるものが異なる。

両方やるべきか

理想は仮説検証スプリント → デザインスプリントの順番。ただし予算が限られる場合は、事業判断が出ていない段階なら仮説検証スプリントを優先する。


LITMUSは、新規事業の仮説検証に特化したスタジオです。デザインスプリントで解決策を検証する前に、6週間で「やるべきか」を判断する。

LITMUS — 仮説検証スタジオ